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「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか??」
「ブルーベリーチーズケーキと、深煎りコーヒで」
「でしたら、ケーキセットがオススメですが、いかがなさいますか?」
「あら、そうなの?ならそれで」
「かしこまりました」
注文をよそ行きの笑顔で受けて引き下がる。
カウンターへ戻ってくると、
「椿さん、今日もお客様に至福の笑顔を届けてちょうだいね」
「………はい、店長」
目の前でニコリと微笑む彼……彼女は、厳島 源(いつくしま げん)36歳。性別は……男と女の間、つまりはオカマである。
今日は割と空いている私のバイト先、『Cafe・FELICITE』(カフェ・フェリシテ)は、至福という意味らしい。
だからか、店長の口癖は『お客様に至福を届けること』だ。
「椿ちゃんの笑顔は今日も完璧だと思いますよ、店長」
「あら、瑞希くん」
「おはようございます、店長」
あ、瑞希先輩だ………。
そこに現れたのは、私よりも完璧な笑みを浮かべる一ノ瀬 瑞希先輩。
スッとした鼻筋にシャープな輪郭、整いすぎているその顔は、どこか華やかさがある。


