私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



***


雨の中、私はトボトボと歩く。

雨が冷たいなと、今になって感じる。
あの時は、胸の痛みしか感じていなかった。


「……………」


立ち止まって、分厚い雲から落ちる雨を見上げる。


瞼に落ちた雨が、涙に溶け合ってさっきから止まらない。
それはまるで私の心を映しているみたい。


「椿ー!!」

「え……?」


遠くから、私の名前を呼ぶ声がする。
振り返ると、傘をさして走ってくる紗枝を視界に捉えた。


……紗枝??
どうして、こんなところに……。


「はぁっ、はぁっ……良かった、ここにいた!」

「紗枝……」


息を切らす紗枝を呆然と見つめる。


「椿も一護も、瑞希先輩までどっか行っちゃうから、探してたんだよ!」

「あ……」


そうだ、私達みんなで歩いてる途中で、立ち止まったから…。