***
雨の中、私はトボトボと歩く。
雨が冷たいなと、今になって感じる。
あの時は、胸の痛みしか感じていなかった。
「……………」
立ち止まって、分厚い雲から落ちる雨を見上げる。
瞼に落ちた雨が、涙に溶け合ってさっきから止まらない。
それはまるで私の心を映しているみたい。
「椿ー!!」
「え……?」
遠くから、私の名前を呼ぶ声がする。
振り返ると、傘をさして走ってくる紗枝を視界に捉えた。
……紗枝??
どうして、こんなところに……。
「はぁっ、はぁっ……良かった、ここにいた!」
「紗枝……」
息を切らす紗枝を呆然と見つめる。
「椿も一護も、瑞希先輩までどっか行っちゃうから、探してたんだよ!」
「あ……」
そうだ、私達みんなで歩いてる途中で、立ち止まったから…。


