私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



「一護……」


キミを思い続けるのは、もう止めるね。
だって、こんな顔させたくない。


どうして、キミだったの…。
こんな苦しい恋なら、出会わなきゃ良かったんだ。


「私の事、嫌いになって…」

「何言って……」


一護の胸元の浴衣を掴んで引き寄せる。

いっそ、こっぴどく振って欲しい。

だけど、私が一護を好きな事は口にできない。

それすらも私には許されないから、その理由を作るよ。


「んっ……」

引き寄せて近づいた唇に、自分から口づける。
唇が重なった頃には、土砂降りで、雨が私達を打ち付ける。

あぁ、夕立だ……。

そんな事を考えて、悲しみから目をそらす。

本来なら好きな人とのキスで高鳴るはずの胸も、キリキリ、ズキズキと痛むばかり。


「っ!!」

重ねる唇から、一護の驚きと緊張が伝わって来る。
重ねた唇から体温を奪うように雨が打ち付ける。