私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



………先輩……。
なんで辛いのに、あんな風に笑えるの?

また罪悪感で苦しくなる胸。

そんな時、先輩が口パクで何かを私に伝える。


『が、ん、ば、れ』

ーーーー頑張れ………。
その一言に気づいた瞬間、涙が一雫、頬を伝った。


優しい人、なのに好きにはなれない人。


私の好きな人は……残酷で、親友を好きなのに……。
この手の温もりが、キミが好きでしょうがないんだ。


「なぁ椿……」

「え……?」


私の手を引く一護が、こちらを振り返ることなく声をかけてきた。

振り返って、私を見つめてくれないことを、寂しいと思ってしまう。


「朝、目が覚めてお前がいない事に、俺は絶望した」

「…………」


絶望……?
それは、どういう事なんだろう。

一護にとって、私が傍にいなくなることが、そんなに大きな事とは思えない。

そんなに特別な存在になれてるなんて、自惚れたこと…思うはずない。