私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



「ごめんなさい……っ」


嘘をつかせて、ごめんなさい。
瑞希先輩を想えなくて、ごめんなさい。
あなた以外の人を好きで……ごめんなさい。


こんなに優しい人なのに、私は報われない恋を手放せない。

だって……好きすぎて、息もできないくらいに焦がれて、私をそんな風にさせるのは、一護…キミだけ。


「おい、椿、瑞希先輩、立ち止まってどうし…」

「っ!!」


そこに、一護がやってきて、私は慌てて両手で顔を覆う。すると、瑞希先輩が浴衣の袖で私の顔を隠した。


「一護、悪かったね。すぐに追いかけるから、先に行ってて」

「………瑞希先輩、椿…何かあったんですか?」


一護が、こっちを見つめている気がした。

私はますます身を縮こませるように、瑞希先輩の袖に隠れようとする。


「椿、大丈夫なのかよ……?」

「椿ちゃんには、俺がついてるから、先に…」

「でも……」

「一護、お前が見てるのは誰だ」

瑞希先輩の声が、聞いたことないほどに低く、強いモノに変わった。


瑞希先輩……?