私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



「俺が分かるのは、椿ちゃんの事だけだよ」

「え……」


先を歩いていた皆の後ろ姿が遠ざかる。
足を止めてしまう私に、瑞希先輩も立ち止まって向かい合った。


瑞希先輩、何を言ってるの……?
それって、どういう意味…?


「俺は、椿ちゃんに笑っていてほしい。健気で、傷ついているキミの……力になりたい」

「瑞希…先輩………」


あぁ………。
この人は、私と同じなんだと気づいてしまった。

どうして今更、気づいてしまったんだろう。

ズキズキと胸が痛くなった。
切なさと悲しさがこみ上げて、息ができなくなるほど苦しい。