私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



「椿ちゃん」

「あ……瑞希先輩」


瑞希先輩が、一番後ろを歩いていた私の隣にやってくる。
いつものように、優しい眼差しが私に向けられた。


「椿ちゃん、昨日、何かあった?」

「っ……」


いきなり、触れられたくない話題をぶつけられて、私は動揺する。


「ごめん、昨日帰って来なかったから……何かあったと思ってさ。1人で抱えてるんじゃないかって、心配だったんだ」


言葉をつまらせていると、瑞希先輩が申し訳なさそうな顔をする。

「瑞希先輩って、エスパーですよね」

「そうかな、自分ではわからないけど」

「私の心の中、見透かされてるみたいで……時々、ドキッとする時があります」


俯いて、笑っていると、ポンッと頭を撫でられる。
反射的に顔を上げると、瑞希先輩は困ったような顔で笑っていた。