私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



「椿、バイト頑張ってね!」

「…………」


紗枝は私の大事な人、私は紗枝を悲しませる事はしたくない。だから、一護の事も……忘れなきゃ……。


「椿!!」

「………あ、え??」


やってしまったと気づいた時には遅く、呆れたような紗枝と一護の顔。


「お前、そんなんで今日のバイト、俺に迷惑かけんなよ?」


また、自分の世界に入り込んでしまった……。

しかも、今日のシフト、一護と被ってるし……最悪だ。

自分の学習の無さに反省しつつ、私は笑顔を貼り付ける。


「ご心配なく、一護こそ、オーダーミスしないようせいぜい気をつければ?」

「あぁ?この俺がミスなんてするわけねーだろ」

「その自信はどこから来るんだか…。いこ、紗枝」

私は紗枝の手を引いて席へと向かう。
私の席は窓際の一番後で、くじ引きで決まった席だ。

私、昔からくじ運だけはあるんだよね。
その代わり、恋愛運は皆無だけど。