私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。




「違う、月を見てただけ……」


誤魔化すように、顔を背ける。
そんな私の傍に、一護が腰掛けるのが分かった。


「帰って来ねぇから、心配した」

「………うん、ごめん」

「……目的は、済んだのかよ」

「えーと、うん……」


そうだ、取りに行きたい物があるって、言って部屋抜け出してきたんだっけ。すっかり忘れてたよ…。


「というか、一護なんで部屋に入れたの?鍵は私が持ってるでしょ?」


これ以上聞かれると、空気に耐えられなくて部屋を出たことが、バレてしまいそうだ。

だから、にっこりと笑って話をそらす。


「何回も声かけたけど、出ねーし、鍵開いてたから、なんかあったかと思ったんだよ」


え、嘘……。
全然聞こえなかったし、気づかなかった。