私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



「………はぁぁっ」


深いため息をついて、紗枝と寝るはずだった部屋に戻ってくる。

電気もつけずに、敷かれた布団に腰を降ろすと、夜空に浮き彫りになった淡い金色の月が見えた。


「欠けてる……」


鈴虫の音、欠けた月が、私の心をなぜか切なくする。

あの月は、私だ。
満たされない心は、永遠に満月にはならない。

自分の心さえ、騙して騙して、時々幸せな気分になって満ちる月も、私を見てくれないキミに気づく度に欠けていく。


「こんなに辛いなら……恋なんてしなきゃ良かった……」


私は……後悔してるのかもしれない。

恋に憧れていた高校1年生の春、私は恋がこんなに苦しいんだって思い知らされた。


ただひたすらに、痛くて苦しい……切なくて、悲しい。