私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



「部屋に忘れ物しちゃいました、ちょっと部屋に行ってきますね。一護、紗枝の事お願い」


私は取り繕うようにそう言って、先輩と一護に声をかける。


「なら俺もついて……」

「部屋近いから、良いって」


付いてこようとする一護を遠まわしに拒絶しながら、部屋の扉まで歩いていく。


「だってお前……顔、変だし…」


こんな時ばっかり、鋭いな……。


本当は……傍にいて欲しい。
紗枝じゃなくて、私の傍に。


だけど、そんな感情を抱くことすら罪のように思えて、また自己嫌悪になる。


私は、それに少し疲れていたのかもしれない。
それを、一護はなんとなく感じ取ってる。


「大丈夫だって、すぐに戻るから」


振り返って笑うと、一護はもう何も言わなかった。
この汚い心を隠せないから、隠すために……私は、部屋を出た。