私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



「私たちは、どうする椿?」


困ったように私を見る紗枝に、笑って手を引く。
そして、一護の所へとやってくると、その隣に座らせた。


「ほら、ここに座ったら?」

「おい、椿……」


抗議の視線を向けてくる一護に、私は気づかないふりをする。


どうして、そんな顔するの。
だって、一護は私なんかより、紗枝の傍にいたいはずでしょ。


「嬉しいくせに」


ズキンッと、一際大きな痛みの波がやってくる。
それを悟られないように、笑顔で隠す。


「椿、どうして、そんなに優しいの?」

「え……?」


紗枝が意味不明な事を言い出す。

その言葉に、どんな意図があるのかは分からないけど、私は首を横にふるふると振った。


「私、結構ワガママだよ。優しくなんてない」


だって、今もこうして隠し事をしてる。

本当は一護を譲りたくないと思いながら、偽善者のような顔をして、良い親友を演じてるんだから。


こんなの、偽りの優しさだよ…。


「椿ちゃん、俺の隣に座ったら?」


離れることも、留まることも気まずくなっていると、瑞希先輩が手招きしてくる。


それにホッとして私は瑞希先輩の隣に腰掛けた。