私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



「一護くん……」

それに、紗枝が切なげに眉間にシワを寄せるのが見えた。

2人とも、何の話をしてるの……?
向き合っている2人に、キリキリと痛む心。


少しだけ2人に近づくと、


「紗枝、大丈夫だ。俺、球技は得意だからな」

「うん…」

やっと聞こえた会話は、紗枝じゃなくて、私がかけてほしい言葉。私の隣にいるのが一護だったら…なんて考えてしまった。


瑞希先輩が不満なわけじゃない、ただ……一番は好きなキミなんだって、また思い知らされただけ。


「心ごと、守ってあげられたら良いんだけどね」

「え……?」


隣に立つ瑞希先輩が、私と同じように目の前の2人を見つめながら、呟く。


それに、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


「すみません、気を遣わせて…」

「もっと頼っていいのに、可愛い後輩なんだから」

「瑞希先輩……」


その優しさに、視界がぼやける。
こんなに優しい先輩に、私は甘えすぎてる気がした。


もっと強くなりたいのに、弱い自分が大嫌い。