私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



「マジで、浴衣マジック♡!!」

「……藍生先輩、近いです」


目をキラキラさせる藍生先輩から守るように紗枝を背中に庇った。

やっぱりチャラ男……。
うん、紗枝に近づけるのは危険だ。


「藍生先輩、ほら卓球やりましょう」

紗枝から遠ざける様に藍生先輩の腕を引く。


「なら椿ちゃんは俺とペア……あっ!!」

「わっ!?」


すると後ろから首に腕を回されて、そのまま後ろに引かれた。

えっ……何!?

トンッと背中に誰かの体温が触れる。
石鹸の、いい匂いがした。


「藍生先輩マジでセクハラっすから!」

「い、一護……」

振り返れば、湿気でいつもよりぺたんこの髪。浴衣の合わせ目から覗くかたい胸板……。

それが、妙に色香を漂わせているから、目に毒だ。


「お前もお前だ、無防備すぎんだよ、馬鹿」

「無防備……?」

そんな事、言われたことない。
紗枝なら分かるけど、なんで私!?