私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



***


お風呂から出ると、スマホに着信が入っていた。
確認してみると、瑞希先輩だった事に気づく。


「瑞希先輩だ、どうしたんだろう…」


温泉の暖簾の前で瑞希先輩に連絡をかけると、すぐに『あ、もしもし椿ちゃん?』と先輩が出た。


「瑞希先輩、今どこですか?」

『オレ達卓球やってるんだ、迎えに行くね』

「同じフロアの卓球ルームですか?大丈夫です、そっちに行きますから」


瑞希先輩って、どこまで紳士なんだろう。

迎えにくるだなんて、そんな気を遣わなくていいのに!

この温泉のある階に、卓球ルームあるし、すぐに行ける。


『そう、ごめんね、先に行っちゃって。待ってるよ』

「はい、それじゃあ」


通話を切って、紗枝を振り返ると、話を聞いていたのか、頷いた。


「卓球やってるんだって」

「男子って、そういうの好きだよね。ほら、お風呂の後に牛乳、温泉といえば卓球とか!」


紗枝の一言に確かにと頷く。

紗枝の言ってること、なんか分かるかも。