私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



夏休みも、私は紗枝ちゃんと押し花でしおりを作ったり、花の絵を書いたりした。

紗枝ちゃんは、花が好きな女の子だった。


『みて!お揃いのキーホルダー!』

『アサガオだ……これ、どうしたの?』


プラスチックの中に、アサガオが押し花されているキーホルダーだ。

『お母さんと、植物園に行ったの!その時のおみやげ!』

『へぇ……楽しそうだね。これ、ありがとう』

紗枝ちゃんからの贈り物が嬉しくて、私は胸にギュッとそのキーホルダーを抱いた。


『今度は、一緒に行こうね!』

『うん、約束』


小指を差し出す紗枝ちゃんに、自分の小指を絡める。

そして、顔を見合わせて笑った。

夏休みが明けて、学校へ行くと、お揃いのキーホルダーがみんなに見つかってしまった。


『紗枝ちゃん、泥棒と友だちなの?』

『近づかないほうがいいよ!』


みんなが、口々にそう言う。

あぁ、紗枝ちゃんも私から離れて行っちゃう…。

紗枝ちゃんと過ごした時間は、すごく楽しかったから、それがすごく悲しいと思った。


俯いて、自分の足のつま先を見つめる。

上履きに書かれた、『つばき』の名前が、涙に滲んで、ぼやけて見えた。


でも、紗枝ちゃんまで無視されたら、悲しい。

一緒にいてくれただけでいいよ。

ありがとう、紗枝ちゃん、さよなら…。


来るであろう別れに、泣きそうになっていると、紗枝ちゃんが、私の前に立つ。