私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



旅館に到着した頃には15時で、私達は早速温泉に入ることにした。


「じゃあ、女の子達はここで」

「後でねー♡」

瑞希先輩と藍生先輩がお風呂の前で声をかけてくる。

なんか、同じお風呂に入るわけじゃないのに、緊張するのはなぜ?

後ろに視線を向けると、


「なぁ尚、あとで牛乳一気やらね?」

「俺はコーヒー牛乳なら乗った!」

「そんなん、どっちでもいーっつの!」


一護と尚くんが牛乳を飲むか飲まないかで盛りあがってる。

男子って、どうしてこんなに子供みたいなの。
瑞希先輩と藍生先輩との違いが明白だ。



「じゃ、椿行こっか!」

「紗枝、そうだね。それでは、また」

先輩方に声をかけて、着替えを手に、紗枝と女湯の暖簾をくぐる。


「紗枝と旅行は初めてじゃない??日帰りなら色んなところ行ったけど」

「確かに!!私、今でも忘れられないよー、タワー事件」

「ちょっと、忘れてよ」


ーーータワー事件。

あれは、東京の、景色を一望できるというタワーに紗枝と登った時のこと。

高所恐怖症だったのに、紗枝がどうしても行きたいっていうから、頑張って最上階に登ったものの……。