私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。




「ご、ごめんっ」

「いや、いいけどよ……その、もう行けんのか」

お互いに恥ずかしくてそっぽを向きながら会話をした。

車を見ると、皆が降りている。

どうやら、私が眠っている間にみんなは先に旅館に向かったらしい。


「俺らで最後だから」

「一護、私が起きるの待っててくれたの?」

「別に、俺も休んでただけだし」


そういいながら、たぶん待っていてくれてたんだと、分かる。だって、照れる時、嘘つく時に前髪触るの、癖だから。


だからきっと気を遣わせないように、そう言ってくれたんだろう。


「ありがとう、一護」

「っ……わ、笑うな急に!!」


笑顔を向けると、一護が怒り出す。

笑うなって、そんなの無理だよ。
急にもなにも、突然こみ上げてくるものだし。



「前は、なんで笑わないのって言ったのに」

「前振りを入れろ、これから笑うって!」

「……そんな、無茶苦茶な……」


私達はガヤガヤと言い合いながら、車を降りて、旅館へと向かった。