私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。




「そうじゃねーよ。俺にも、色々あんの」

「悩むより行動しなよ」

「いい、このままが良いって言ってんだよ」

「意味不明、なんで?」


紗枝の隣にいた方が、一護は嬉しいはずなのに。
ここまで照れ屋だと、先は長くなりそう。


「出発するよ」

「「「はーい」」」


瑞希先輩の声に、車が発進する。


「あーあ、出ちゃった」

「………なんだよ、お前は嫌なのかよ」


フイッと窓の外を向いてしまう一護が、呟く。

「嫌とかじゃなくて……むしろ、なんで私の隣なのかが疑問だよ。奥手だよね、意外と」


呆れていると、一護がジロリと私を睨む。

うわ、怖っ。
なにも、そんな睨まなくたっていいのに……。


「……そういんじゃねーよ。俺はただ、お前と…」

「え?」

「なんでもねーよ」


まるで、反抗期の男の子みたいに、機嫌が悪くなる一護に、私は訳が分からず首を傾げるしかなかった。