私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



***


温泉旅行当日。

カフェの前で待ち合わせした私達は、瑞希先輩が運転するバンに乗り込む。

運転席に瑞希先輩、助手席に藍生先輩、後ろの席は先に到着していた一護と私が一番後ろ、紗枝と東野くんが真ん中の席に分かれて座る。


あっ……紗枝と席変わった方がいいかな。


「一護、一回出て」

そう思った私は、扉側に座る一護に声をかける。

すると、一護は面倒くさそうに、「なんでだよ?」と言った。


この鈍感め……。
せっかく、気をつかったのに……。


「紗枝の隣、座りたいでしょ?」


小声で声をかけると、一護は固まる。

な、なに??
緊張してるとか??

そういえば、前も教室の入口で紗枝に声がかけられずにうろうろしてたっけ。

あれじゃあ、ただの変質者だ。


「いや……いい、遠慮しとく」

「………はぁ?」


遠慮しとくって……。
どんだけ純情boyなんだ、この人は。

顔とギャップありすぎでしょ、イケメンなのに!


「あのね、怖がってたら何も進まないでしょ」

応援するって決めたのに、これじゃぁ私も前に進めない。
早く、踏ん切りつかせてほしいのに……。