私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



『あの、外へ遊びに行かない?』


クリクリとした可愛らしい女の子。
別のグループにいる、南 紗枝ちゃんだ。


『え……?』


あんまり話した事はなかったので、私はパチクリと目を見開いて、紗枝ちゃんを見つめた。


すると、紗枝ちゃんは『ふふっ』と花が咲いたように笑う。


『私のアサガオがね、咲いたの。一緒に見に行こう!』


すごく、明るくて、真っ直ぐな子だと思った。

私がクラスで無視されてるって知ってるのに、そんなの気にした様子もない。


『ねぇ、行こう?』

『うん……』


差し出された手に、私は不安な気持ちで手を重ねた。すると、力強く紗枝ちゃんが引っ張る。


『すっごく綺麗に咲いたんだ!』

『へぇ…早く診てみたいな』


あまりにも、嬉しそうに笑うから…。
私もつられて笑っていた。


そう、これが紗枝と初めて話した日。
本格的な夏が始まる7月の事だ。