私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。




「んっ、藍生先輩のパスタはやっぱり世界1です!」


この口の中に広がるクリームソースがまろやかで…。
あのチャラ男の手で作られたとは思えない程の優しい味。


「ハハッ、アイツも喜ぶよ」

「チャラいけど!」

「ハハッ、ごもっとも」


美味しいパスタに疲れも吹き飛ぶようだった。

不意に視線を感じて顔を上げると、瑞希先輩が可笑しそうに私を見ている。


「幸せそうだね」

「瑞希先輩、子供みたいとか思ってます?」

「ちょっとね」

「もう!」


何も聞かずにいるけど、たぶん瑞希先輩は気づいてる。
私の空元気と、さっき本当は傷ついていたこと。


「優しいですね、瑞希先輩は」

「………なんの話だろう」

「大丈夫です、分かってますから。ごめんなさい、本当は瑞希先輩が隣にいてくれて、ホッとしてました」


無理やり笑うと、寄った眉間に指を当てられる。


「そんな顔して、辛い時は、笑わなくていいんだよ」

「はい……」


私はスッと笑顔を決して、顔を歪める。
すると、ポンポンと頭を撫でられた。


この人は、どこまでも優しい。
大人で、いつも私の気持ちを察してくれる。


どうして、瑞希先輩じゃなかったんだろう。
普通の女の子だったら、優しい瑞希先輩に惚れてる。

なのに、どうして一護じゃなきゃだめなの……?