先輩は寂しそうに顔を歪めて、私の頬に触れた。

「痛い?」

親指でスルリと撫でられた頬は叩かれたせいで熱を持っていて、先輩の冷たい手が気持ちよかった。


「…」

「猫みたい」

答えずに目を細めているとそう言われた。

知らないうちに撫でる先輩の手に触れていた。


「もう少し、このままがいい」


その時の私は熱に浮かされた様な目をしていたと思う。

殆ど無意識に発した言葉に、先輩はまた少し微笑んだ。


途端に冷静になる。


今日初めて話した先輩に私は何を言っているのだろう。

馬鹿だ。引っぱたかれておかしくなってるんだ。

それともこの人のせいか。


柔らかい目元や色素の薄い髪がふわっとした雰囲気を際立たせた。

だから気を許しそうになるんだ。