一回寝た女は切る。一回限りの、連絡先も知らない、その場限りの関係を築く。

そんなことをしていたツケがまわったのか。きっとそうに違いないと、自分で自分を納得させる。

 







基本的に携帯の待ち受けは、初期設定のままだったり、当たり障りのない写真だったり。

気にも留めないようなものにしているが、一回だけ、百合子の写真にしていたことがある。


あれは、別れて間もない頃、自分から別れを切り出しておいて、元カノの近況を聞いたときのことだ。百合子の友人でもある、高校の同級生に。








「最近百合子付き合い良すぎるから、なんかあったと思ったけど」

「まさか別れたとはねぇ、クズ野郎」

「どの面下げて、うちらんとこ来たわけ」



と、辛辣な言葉を浴びせられたのは記憶に新しい。


オブラートに包もうとすらしない、はっきりした物言いは、百合子を心配しているのが伝わってきて、安心した覚えがある。

居心地は、悪かったけれど。アイツ、元気にしてるか、とさりげなく聞いたつもりでいたが、によによするやら、頭をゴリゴリいびられるやら、反応は様々だったけれど、元気でいようと頑張ってるよ、口を揃えて言われて胸がいっぱいになるとう感情を初めて知ったのもこの時だった。






恐縮しきりの飲み会の後で、冬子から一枚の写真が送られてきた。





「冥土の土産に持っていけ」



 とんでもない文面とは程遠い、百合子のふにゃっと笑った顔の写真。

飲んで騒いでいる最中だったのか、ピントの合っていないぼけぼけの写真だったけれど、愛しいと、一日も何度も何度も携帯を見て、いっそのこと待ち受けにするか、と設定したときのことだ。







 ふらっと行った合コンで、気軽にやれそうな女を選んではホテルに行ったりしていたが、後にも先にも携帯を覗き見られたのは、あの女が初めてだった。

名前もろくに覚えていない。





どこをどうして辿って行ったのかわからなかったが、LINEが来るようになった。辛うじて電話番号が知られていなかったのは、不幸中の幸いだったのだが。

その女は、倉橋、と言っていた。

名前で呼んでほしい、と何度もしつこく言われ、覚えたくもない恵美という名前が、どっしりと鎮座していた。






「あたし、この子知ってる。佐伯……さん?」