「….こんにちは」


普段、俺ら3人かタケちゃんしか開けない美術室の扉がそろりと開いたのは、午後の部活中、いつものように3人で雑談を交わしていた時だった。


「おーっ、やっと来たか!」


俺はにこやかに立ち上がる。

カナは予想通り興味なさそうにその光景を見ていて、ミウはこれまた予想通りなにを言っていいのかわからずあたふたとしている。顔はすごく嬉しそうだけど。


今日は、初めて写真部の奴らと俺らが集まって話し合いをする日になっていた。もちろん呼び出したのは俺だ。


「……美術選択してなかったから美術室って初めて来た」

「俺も最初は場所さえ知らなかったっつーの」


美術室が興味深いのか、俺の友達であり写真部部長の宮瀬 ( ミヤセ ) が頭をぐるりと回している。


「 ところでお前、他の連中は?」

「ああ、面倒臭いから置いてきた」

「おまえなあ……」


グダグダと宮瀬と話をしていると、カナから鬱陶しそうな声がかかったのでそこで中断する。しょうがないので、俺は宮瀬を2人の眼の前まで連れて行った。


「俺が紹介するわ。
こいつは宮瀬 星夜 (ミヤセ セイヤ)。俺と同じクラスの秀才くんな。幽霊部員ばっかの写真部の部長もやってる。まあ、頼りになる奴だから仲良くしてやって」


意外にも真面目に紹介してやると、宮瀬は軽く頭を下げた。こいつは、口数が少なくて落ち着いた奴だけど、しゃべると色んな知識がぽんぽん湧いてきて面白いのが特徴だ。

ミウとカナは宮瀬に向かって手を差し出した。

「ふーん、ノガミとは正反対の好青年って感じね。好感持てる。よろしくね」

「た、確かにノガミくんとは正反対……。よろしくね、宮瀬くん!」


正反対ってどういう意味だっつの。
宮瀬は二人に向かって、もう一度軽く頭を下げた。いや、宮瀬、そこは2人の手を握るところだからな。

2人とも、出した手を引っ込めて笑っている。そう、宮瀬ってこんな奴だ。ちょっと変わってる。