「男の子だなんて、聞いてないよ!タケちゃん!!!」
タケちゃん——そう呼ばれているこのおっさんは、俺をここに導いた張本人。担任クソ野郎だ。
そして、それに詰め寄っているのはさっきまで俺が口を塞いでいた女のコ。見た目は良くも悪くもない、どこにでもいるような普通のコ。
「まあ、言ってないからな。」
「タケちゃんひどい!!
私すっごく楽しみにしてたのに!!」
どうやら俺がここに来たのは、彼女にとっても不機嫌の要因らしい。俺が一番文句言いたいっつの。
あの時、竹山先生____タケちゃんに捕まる前に逃げようと、全力疾走して、走って辿り着いた場所が、ここ美術室だった。
タケちゃんが俺を美術部員にしようなんて策略を知らなかった俺は、上手く逃げこめたつもりだったけど、タケちゃんが俺を連れてくるつもりだったのはココ、美術室だったのだ。
「ねえタケちゃん?野上さ……野上くん、さっきから一言も話さないけど、一体どういうことなの?説明して。」
さっきの普通女子とは打って変わって、黒髪ショートの美人な彼女は、さっきタケちゃんと一緒にここへやってきた。声まで美しいって何事だ。
険しい顔をした黒髪美人の彼女を、タケちゃんはまあまあ、となだめる。
そして、がっしりと俺の肩を掴んで、彼女ら二人の方に向かされた。
「ああ、じゃあ紹介しとくな。
こいつは野上 新(ノガミ アラタ)。
生活態度は悪いわ課題は出さんわ俺のクラスの問題児だ。部活でもやらせて気持ち入れ替えさせようと思ってな。お前らにも迷惑かけると思うけど、よろしく頼むよ」



