「席空いててよかった」
金曜日の夕方。ショッピングモールは私たちと同じような学生で溢れていた。
ファストフード店が集まったフードコートの一席に座ると、ノガミくんが何か買ってくる、と席を立った。
「何がいい?」
「えっ」
「えっ、ってなんだよ。
何飲みたいって聞いてんの」
「あ、じゃあホットココア……」
ノガミくんはフッと笑う。そして、わかったって言って人混みの中に消えていく。
その後ろ姿を見ていると、近くに座っている女子高生の団体が、ノガミくんを指差してはしゃいでいるのが聞こえてきた。
「ね、いまの人カッコよくない?!」
「えー、でもチャラそうだよ」
「そこがいいんじゃん!
声かけてみようかなあ〜」
女の子たちは、目をキラキラさせて話している。ノガミくんは、やっぱり人目につくほどの外見をしているんだな。
くるくると綺麗に巻かれたロングの髪の毛。爪の先までピンクに彩られている彼女たちはとっても可愛くて、私はこの子たちと同じ女子高生だってことが恥ずかしく感じるくらいだ。
派手でかっこいいノガミくんの隣は、きっとこういう子たちが似合う。キラキラしてて、かわいくて。
タケちゃんが無理矢理に連れてこなかったら、絶対関わることもなかった人。そう思うと、ノガミくんが私に言った「好き」は、奇跡みたいなものかもしれないな。
ノガミくんは一体、私なんかのどこがいいんだろう。全然わからないよ。