「ノガミくん!
とりあえず休みたい!です!」


疲れた私はノガミくんへと声をはりあげる。周りの人がチラチラと見ているけど、それより足の痛さのが重症だ。


「体力なさすぎな。」

「ノガミくんが歩きすぎなの!」

「わかったわかった!怒んなって。
たくさん歩かせてごめんな」


ノガミくんは、私の頭にぽん、っと手をのせた。その口調が優しくて、私は何も言えなくなってしまう。さっきまで、私のことなんて気にもしてなかったくせに。


「とりあえずどっか座ろう」


ノガミくんは私の手を引いて歩き出す。今度は、私の歩調に合わせてゆっくりと。何も言われずに繋がれた手。だけどこれが不思議としっくり来てしまう。

ノガミくんに触れられると、どきっとして、それから、あったかいココアみたいな安心感に包まれるんだ。

あの日の帰り道、ノガミくんが私のことを好きでいてくれるってことが、ちゃんと自分の中でわかってしまって。

でもノガミくんは、あの後も、次の日からも、また"普通"に接してくれている。私が、困るから。

一体いつから。どうして。なんで。
疑問がたくさん浮かんできたけど、私はノガミくんに何も聞くことができてないんだ。

だって、人の気持ちを知ることは。人の心の中に入り込むことは。
すごく、こわいことだから。