あの時、どうして好きだって言ったの?
そんな言葉が出かかって、止めた。

ノガミくんの返事が怖かったから。
………私って、ずるい奴だ。


隣のノガミくんは、少しの間をおいて口を開いた。


「んー………」

「?なに?」

「ミウがいるから?」


え、と。驚いて立ち止まる私。
それに驚いて、え、と立ち止まるノガミくん。
え、待って。ノガミくん何言ってるの。

固まった私の方を振り返ってノガミくんが笑った。おかしい。暗いのに、ノガミくんの顔だけはハッキリと見える。

ノガミくんは私の方まで寄ってきて、顔を覗き込んできた。


「なっ……!なにっ……」

「ふはっ、ミウ顔真っ赤だけど」


ノガミくんは余裕そうに私から顔を離してそう笑っている。自分の顔が熱いのはわかっている。でもノガミくんがものすごく楽しそうで、なんだか悔しい。


「い、意味わからない冗談ばっかり言わないで……」

「冗談ばっかり?」


ノガミくんはいきなり不機嫌そうな顔をする。だって、だって。ノガミくんが、そんなに余裕そうだからだよ。


「ノガミくんは、こういうの慣れてるかもだけどっ……。よ、余裕すぎる!ノガミくんのバカ!」


あ、ちょっと言い過ぎたかも、なんて。言ってからじゃもう遅くて。顔を上げたら、ますます不機嫌そうなノガミくんがこっちに近づいてきて。

私のすぐ目の前で、立ち止まる。
私はノガミくんから目が離せなくて、顔を上げて彼を見つめた。