俺はカナに何も聞かなかったし、カナもこれと言って俺にそれ以上話すことはしなかった。
何故、ミウが絵を描かないのかも。
何故、あの絵をあんな場所に放置してあるのかも。
ただ、カナは帰り際、俺に言ったんだ。
『ノガミ。ミウのことが本当に好きなら………あの子を、救ってやって』
_______救う?俺が?ミウを?
問いかけようとした言葉は、言葉にならなくて。だってカナが、今にも泣きそうな顔をしていたから。
そしてその言葉と同時にわかった。
俺はどうしようもなく____ミウのことが、好きなんだって。
まだわからない彼女に触れたい。
出来ることなら、カナが言うように、俺がミウを救ってやりたい。
ミウをもっと、知りたい。
思わず手を引いて、ミウが俺の中にすっぽりと収まった時、もう離したくないと本気で思った。
このまま、俺の物になってしまえばいい。
ミウが何を抱えていて、何を隠しているのか、俺にはまだ何もわからないよ。だけど、そんな君を抱きしめたいと思うこの感情は、決して同情や嘘なんかじゃないんだ。
強く、強く、強く、壊れるほど、苦しいほど、彼女を抱きしめたい。
握った手の力を緩めて、指を絡める。驚くミウの肩に、俺は頭をゆっくりとおろした。触れた瞬間に、びくりと反応するミウが可愛くて、思わず口元が緩んだ。
「なあ……返事、まだいらないから。
俺がミウのことすげえ好きってことだけ、知っといて」
それは、かっこ悪い俺の、最後のカッコつけだった。