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『ミウが好きだ』
突然でもなく、冗談でもない。言いたいから言った。俺が、この目の前にいるミウのことが、誰よりも好きだってことを。
「ノガミくん、何言って……」
「……本気だよ、俺。ミウのことが好き」
目を見開いて、顔を赤くしたミウは、俺の手を振り払おうと手首を動かしたけど、俺は離さないようにそれをさらに強く握った。
ミウがますます赤くなる。
可愛いくて、どーしろっつんだよ。握った手を、離せるわけなかった。離したくなかった。小さくてあたたかい、ミウの手を。
_______あの絵を見てから。
カナは丁寧に元にあった場所にそれを返した。そこには幾つもの絵が無造作に置かれていて、誰が描いたのかと聞かなくてもわかるほど、ミウの絵が転がっていた。
俺はそのたくさんの絵にかぶった埃を、さらさらと手で落としてやった。カナは黙って、それを見ていた。
ミウの絵はどれも抽象的で、それでも芯がしっかりしていて。ああ、芸術ってこういうことか、と。心をうたれるってこういうことか、と。俺はぎゅっと、ミウに心臓を鷲掴みにされたようだった。