生まれてから今に至るまで、私は結構真面目に生きてきたと思う。ズル休みとか遅刻とか、そんなのとは無縁の人生を送ってきたつもり。

でもね先生、ごめんなさい。

今日だけは、午後の授業サボろうと思います。こんなの初めてでどきどきしてるけど、それ以上に胸を支配してる気持ちがあるんだ。


アイコちゃんと話を終えて、私は教室に戻った。かろうじて泣いてはいなかったものの、泣いた後の顔なんてカナにはバレバレで、すっごく心配されてしまった。

ごめんね、って呟いたあと。

いつも心の中で唱えてきた大きな大きなありがとうを、カナの目を見て伝えたら、カナは恥ずかしそうに笑った。


「ばかだね、ミウは。」そんな風に、目に涙を溜めながらカナが私を抱きしめた。

ぎゅって、あったかくて、止めてた涙が溢れてしまいそうだったけど、頑張って堪えた。その代わり、カナをぎゅって抱きしめ返した。

いっぱい、いっぱい助けてもらった。カナはずっとずっと、私の隣にいてくれたんだ。何も言わずに、ただただずっと一緒にいてくれた。


「ミウ」って。カナは私を離して、ポケットから出した物を私の手に握らせた。それは冷たくって、カナの手が余計にあったかく感じたんだ。


「もう、ミウが何考えてるかなんてわかるんだから。……これ、準備室の鍵。今日のために、ずっと持ってたの」