______カナが俺にそう言った。
あのあと俺が1人で美術室へ帰ったとき、もうそこにはカナしかいなくて。
カナは静かに、ただだだ頬に伝うだけの綺麗な涙を流していた。
あのとき、ミウを追いかけることなんて出来なかった。
あいつは、ミウ、と叫ぶ俺の声に、振り返ることさえしなかった。
ああ、なんで。
どうして俺は、こんなに無力なんだろう。そしてミウは、どうしてあんなにすべてを抱え込もうとするんだよ。
ミウは悪くない。誰も悪くない。
周りはいつもそう言う、とミウは言っていたけど、そんなの当たり前だろう。だって、ミウも、葉月先輩とやらも、誰もなにも、悪くないんだ。
なのにどうして、すべて自分のせいにして、1人で胸の中に仕舞おうとするんだよ。
カナだって。タケちゃんだって。俺、だって。ミウの周りには、支えてくれる人が、側にいてくれる人たちが、確かにいるはずなのに。
_____ミウは何もわかっていない。
「……俺にしてやれることは、もうないと思う。ミウが、自分で動かなきゃ、なにも意味がない」
ミウは、自分から俺の手をすり抜けて行ったっていうのに。俺になにができるって言うんだよ。これ以上、俺はもうなにもしてやれないよ。
なあだけどさ。
俺は少しだけ、ミウのことを信じてみたいと思うんだよ。
ミウが、俺やカナ、タケちゃん、ミウの周りの人間たちの想いに、ちゃんと自分で気づくことを。
そして、1年前の出来事からちゃんとサヨナラすることを。
俺がミウに向けて行った『馬鹿』だという意味を、ちゃんとわかってくれることを。