「ミウはね、本当に葉月先輩のことが好きだったんだと思う。

でもきっとそれ以上に、絵を描くことがあの子にとって大きな存在なんだってこと、私たちも、先輩自身も、わかってた。

ミウは、自分が悪いって思ってる。
そりゃあ、大好きな先輩が大賞をとって欲しいっていう気持ちと、自分ががむしゃらになって書き上げた絵が大賞に選ばれて嬉しいって気持ちがごちゃごちゃになってしまったのは、わかる。

作品が入れ替わってるなんて、誰も想像もつかないだろうしね。

でも。

ミウは何も悪くないでしょう。むしろ、ミウは傷ついた側のはずでしょう。

あんなに、あんなにも感情が揺さぶられるような絵が、ミウの世界が、一瞬にしてミウのものじゃなくなっちゃったの。

傷つくにきまってる。辛かったにきまってる。どうしていいかわからなかったにきまってる。

でもね、あの子は、必死に隠すんだよ。私に隠す必要なんて何もないのに。私だけは、何があったってミウの味方でいるのに。

ミウの気持ち、わかってるようで、私は何もわかってなかったのかもしれないね。


ねえ、ノガミ。


タケちゃんがアンタを連れてきた理由、私すぐにわかった。
これを運命と呼ぶのなら、そうかもしれないね。


それほどに、ミウの描く絵と、ノガミの姿は重なって見えるよ。

ミウを、どうか、救ってやって。」