「そなた、母は好きか?」



と唐突に投げられた問い。


何故、そんなことを聞くんだろうか。


俺は、あの人が苦手だった。


あの人から受けた傷はきっと、この先ずっと消えない。



だが今は、



『……俺は、その問いに対する答えを持ち合わせていません』



俺の中のあの人の記憶は、”日課のように俺を殴る姿”と”5年前に初めて見たあの人の泣いている姿”のまま止まっている。



好きかと問われても困る。



それでも、



『……ですが、俺にとってはたった一人の母親です。必要な存在ではあります』



俺の返答に、



「……そうか。そなたは優しい子じゃな」



と呟いた。