「あれ?新山、男と手繋いでんじゃん!」

「ほんとだ!ウケる」

最悪

夏目くんが少し気まずそうに手を放す。

「つかあいつ新しい奴じゃん?誰だよ」

すると夏目くんは男子たちのほうを見ると、

「俺?夏目楓馬。今日から宜しくな!」

と、あり得ないほど爽やかな挨拶を返した。

正直男子たちも驚いたようで、急に静かになった。

女子は夏目くんの顔を見て何やら騒いでいた。


夏目くんは私の方に向き直り、またもやにっと笑った

「俺のことは呼び捨てでいいから。」

「えっと、えっ、じゃあ私のことも呼び捨てでいいよ」

正直流された感は半端無かったけど、いっか。

「おう!さら、だよな?」

「うん。楓馬、ね。」

私はおかしな緊張をして、片言気味になってしまった

このやりとりを見ていたらしい男子がまたもや騒ぎ出した

「彼氏じゃん!付き合ってんのかよー」

「手出すの早えー」

女子もくすくす笑っている

私は塾の友達がいないので逃げ場がない

正直帰りたかった

しかし夏目くん…いや楓馬は特に嫌な顔をしていない。

「ごめんな、なんか急に」
「いやいいよ。楓馬こそ、好き勝手言われて嫌じゃない?」
楓馬は少し困ったような顔をして、
「んー、大丈夫!」
と笑った。

慣れているのかなんなのかわからないけど、無理してるんだな、となんとなく感じた。

「そろそろ授業だから、戻るわ」

そういって自分の席に戻っていった。