「そういえば希和。
わたし、明後日25日、奥村に遊びに誘われちゃった」

「デート?」

「ううん。
柏ユメのサイン会。
奥村のお母さんが出版社で働いていて、チケットくれたんだって」

「心、柏ユメ大ファンだもんね!楽しんで来てね」

「ありがとう。
でも、思っちゃうんだ。
柏ユメの話題で盛り上がった、彼のことを」

「春田さんか…」

「わたし、この間言われたの。
3年後…わたしは水樹くんの世界にいないって」

「……は?」



希和はわたしの前に座った。



「どういうこと?」

「よくわからない。
だけど、嘘じゃないって。
わたし信じられなくて、その日から電話かかってきても無視しちゃっているの」

「それ聞いたのいつ?」

「希和と話した日だから…7月25日」

「ほぼ1ヶ月も前じゃない。
ずっと無視しているの」

「だって…怖いじゃない、信じたくないんだもん。
3年後なんて、そんな遠くない未来にわたしがいないなんて。
水樹くんの話が本当なら、わたしは3年の間に死んでいることになる」

「……」

「自分が3年の間に死ぬなんて、信じられるわけないでしょ。
怖くて…自分が生きていないなんて、信じたくないっ…」



やりたいことは見つからないけど、生きていたい。

死ぬなんて、そんなの嫌だ。



「…ごめん。
何て言ったら良いか、わからない。
でも、あたしだって心が死ぬなんて、そんなの嫌だよっ」

「希和…」

「生きていてよ、心」



わたしに「生きて」と言い、涙を流す希和。

つられて、わたしも一緒に涙を流した。