「……ごめんね、サボらせちゃって。
わたしを置いて行っても良かったのに」
「春沢が泣いているのに置いて行けるか。
置いて行くなんて最低だ」
「ありがとう」
わたしの涙は止まることを知らず、1限目をサボらせてしまった。
奥村には悪いことをしたけど、話を聞いてもらって泣けて、すっきりした。
「今行くの気まずいから、休み時間になったら行くか」
「うん。
わたしも授業中に戻るのは気が引ける」
「どうせなら1限全部サボっちゃおうぜー」
床に胡坐(あぐら)をかき、思い切り伸びをする奥村。
わたしも隣に座ろうとしゃがみ込むと、止められた。
「お前は座るな」
「どうして」
「俺はいつもこの部室使っているから気にしねぇけど、ここは腐っても運動部の部室だ。
何が落ちているかわからねぇ」
立ち上がった奥村は、壁に立てかけてあったパイプ椅子を取り出し埃を払うと、わたしの近くに置いてくれた。
「これ使え」
「わざわざありがとう」
パイプ椅子に座ると、ギィと鈍い音がする。
お互い黙り込み沈黙が続き、わたしは足をぶらぶらさせていた。
「あ、あのさー春沢」
「んー?」
「こんな時にあれなんだけど」
「うん」
「好きだ」
「うん。……へ?」
サラッと、当たり前かのように言われる。
急いで奥村を見ると、顔を両手で隠している。
隙間から見える頬や、耳まで真っ赤だった。



