「そういえば水樹くんって、彼女とかいないの?」
『いたらデートとかに心ちゃん誘わないって』
「好きな人とかは?」
『いない……、と思う』
「何でそんな曖昧なの」
『……いない。うん…いないよ、きっと』
いつもテンションが高い水樹くんにしては、ちょっと低い声。
もしかして、聞いちゃいけない話題だったかな。
「ごめん…変なこと聞いた。忘れて」
『気にしないで。大したことじゃないから』
「……」
『この際だから言っておくけど、僕1番仲の良い異性は、心ちゃんだよ』
「え?」
『大学では男としか関わらないし、僕口下手だから上手く話せなくって』
「嘘。水樹くんわたしの前で話せているよ」
『心ちゃんは何でかわからないけど、すっごく話しやすい。
もしかしたら僕ら、どこかで会っていたかもね』
「わたしの周りに春田水樹なんて人いないけど…」
『じゃ前世だ!僕らは前世で出会っていたんだ』
「たまに凄くロマンチックなこと言うよね」
『そう?』
自覚がないのか。
「たまにこっちが恥ずかしくなるようなこと、サラッと言うよ」
『嘘だよー』
「本当。わたしがどれだけ真っ赤になっていると思っているの」
『心ちゃんが赤面した姿…見てみたい』
「こっちは困っているのー!この無自覚!」
『心ちゃんって、どんな可愛い顔しているんだろうね』
「可愛くないよ」
『会える日が僕はすっごく待ち遠しいよ。
心ちゃんが可愛いとか美人とかこの際どうでも良い』
「どうでも良いのか……」
『心ちゃんに会いたいよ、僕は』
…やっぱり水樹くんは無自覚だ。
頬っぺたに手を当てると、仄かに熱い。
「…わたしも、水樹くんに会ってみたい」
『どうにかして会える方法考えなくちゃね』
「そうだ。
水樹くんって3年前ってわたしと同い年なんだよね」
『そうだけど?』
「話せなくて良いから、水樹くんに会いに行きたい。
どこの高校に通っていたの」
『……っ』
息を飲む声が聞こえる。
「え……水樹くん?」
『……あー、ごめん。それは…無理、かな』
「どうして?」
『ちょっと色々理由があって…』
「理由って?」
『……ごめん。無理なものは…無理、なんだ』
「…そっか。わかった。
ごめんね、変なことさっきから聞いちゃって」
「あ、えっと…謝らないで。僕にも責任あるんだし」
…ちょっと気まずい空気になってしまった。
わたしたちの間に沈黙が流れる。



