『でも、どうしてそこまで頑張っているの?』

「え?」

『好きだから、そこまで頑張っているの?』

「……実は」




わたしが国語だけでもトップを目指しているのは、確かに国語が好きだからって言うのもあるけど、本当の理由は違う。

かっちゃんが、3学年で1番トップの成績を持っているから。

かっちゃんの隣に並ぶには、わたしも全教科まではいかないにしても、何かでトップを目指したくて。

運動は苦手だから、勉強で、理数系が駄目だから文系で、文系の中でも1番国語が得意で好きだから国語のトップを目指し始めた。



「…好きな人が、トップだから、釣り合いたくて」

『前に言っていた片思いの相手って人?』

「はい…。
元々お母さん同士が仲良くて、近所のお兄さんって存在の人で。
今は引っ越してしまったので近所じゃないんですけど、同じ学校の先輩なんです」

『先輩に恋かぁ。良いね恋する乙女は。きっと心ちゃんは美人さんだ』

「美人じゃないですよ、可愛くもないです。
どこにでもいるような、石ころみたいな人ですよ」

『心ちゃん、石ころは宝石の原石って言われているんだよ。
輝けない女の子なんていないよ。
むしろ恋する女の子なんて、世界で1番綺麗なんじゃないかな』

「…女の人、口説くの上手そうですね」

『なっ!人が折角励ましてあげようと…!』

「冗談です。
もしそれを誰に対して言っていたとしても、嬉しいです」



クスッと笑いが漏れる。



『前々から思っていたんだけど、心ちゃんのその敬語何?』

「え?」

『確かに上級生には敬語使えって言うよ。
だけど僕、3年前は心ちゃんと同い年だよ』

「あっ…!」



そういえばそうだ。

わたしは3年後、18歳で春田さんと同い年だ。



『普通にタメ口でオッケーだよ。
むしろそうしてほしい!』

「…でも今更…」

『じゃ、タメ口に変えてくれないと勉強教えない!』

「そ、そんなの酷いです!」

『勉強教えてもらいたいのならタメ口にする!』

「…良いの?」

『もち』

「古っ!」

『どうするの?どーするの』



歌うように話しかけてくる春田さん。

わたしは1回大きく息を吐いた。