「……」




目が覚めた時、視界に広がったのは真っ白な天井と壁。

1度どこかで見たことがあるような景色に、俺は瞬きをひとつした。




「……気が付いたか、水樹」

「…父さん?」



傍に居た父さんに声をかけると、父さんは目を見開いた。



「思い出したんだな、全部」

「え……?」

「以前のお前は俺をお父さんと呼んでいた。
随分他人行儀な言い方だった。
義理の父親を呼ぶようなな」

「……今、いつ?」

「9月25日だ」



あれから1ヶ月、俺はずっとベッドの上で寝ていたらしい。

何度俺は意識不明になれば良いんだ。



「医者を呼んでくる。
大人しくしていなさい」

「わかった……」



目を閉じ、思い出す。

今度は忘れていなかった。

父さんが仕事人間だったことも、母さんが死んだことも、大学生になったことも。

8月25日のことも、全部忘れていないで覚えていた。



「今日は1日病院で様子を見てみましょう。
何、すぐに退院出来ますよ」



医者が来て軽い検査を行い、どこも異常が見つからなかった。

院内や庭を歩いても良いということだったので、俺は外に出てみることにした。