「────・・・ちょ、っとまって・・・!!!!」

そう叫んで勢いよく電車に乗ってきた人は、

春だとは思えないくらい汗をかいていて。

ダークブラウンのふわふわしたくせのついた髪を揺らした男の人だった。

わたしよりは、年上だと思うけど・・・

「あっ、ぶね・・・っ、」

・・・うん、朝が苦手なんだろうな。

会った瞬間だけど、すぐにわかった。

驚いて凝視してしまっていたその男の人と、目が合う。

「あ・・・すみません、騒がしくしてしまって」

「あ・・・いえいえっ、大丈夫ですよ。あの・・・よかったら、ハンカチ・・・使いますか?」

そう言って差し出したハンカチを見て、男の人はフルフルと首を横に振る。

「いや、こんな綺麗でかわいいハンカチを汚すわけにはっ・・・」

真剣に申し訳なさそうな顔をするその人が、今どきの男の人にしては珍しいなと思った。

・・・今どきの男の人に失礼か。

「ふふっ、大丈夫ですよ?春だからクーラーかかってないし、それだけ汗かいてたら暑くないですか?」

「あ・・・」

わたしの言葉に少し顔を赤らめて、

じゃあ・・・お言葉に甘えて

そういうこの人が、不覚にも可愛いと思えてしまった。