鞄を持って1階のリビングに行くと、お母さんが朝ごはんの準備をしてた。

「あら和花[ワカ]、今朝は早いのね?」

「目が覚めたの」

何事も無かったかのように来る朝。

いつものように、お父さんはいない。

「・・・いないのね」

「いつものことでしょ」

小さい頃から積み重ねてきた夜の思い出は、世間一般の家族団らんなんかではなくて。

いつものことだと思っていたのに、今朝はなぜか思い出してしまう。

昨夜の記憶。

鮮明に思い出される前に、震えそうになっている自分の体に気付いて、朝ごはんが並べられたテーブルの椅子に座る。

朝が来る度、前夜の記憶を消したと自分に無理やり理解させる。

そして、いつもの朝を迎えるんだ。

「・・・さぁ、忘れた忘れたっと、」

「何か言った?」

「ううん」

良くも悪くも、いつもと違う朝。

少しだけ違和感を覚えながら、自分の星座が占いで1位だということを耳にした。