酔 恋 -ｽｲﾚﾝ-

出席番号が真ん中くらいまで来たとき、写真を見てぶつぶつと呟く声が止まった。

「この子･･･」

見たことあるなぁ･･･と、思ったとき、朝の光景が頭の中を横切った。

「そうだ、この子･･･！」

そう呟き自分の鞄の中を探り、朝借りたハンカチを取り出した。

「まさか生徒だとは･･･、やらかしたな･･･」

まさか、まさかあの恥ずかしい光景を生徒に、それも自分のクラスの生徒に見られるとは大失態だ。

でも、今日帰って洗濯して明日に返すことができるだろうかと悩んでいたからよかったと言えばよかったんだけど･･･

複雑。

そんなことを考えながら、俺は名前へと目を移した。

「───･･･仁科 和花･･･、」

その名前を小さく言葉にすると、頭の中にある彼女の姿がその言葉を拾った。

彼女を見たときすごく驚いていたから、小柄な女の子を驚かしてしまった、と男として反省した。

小柄で、ふわふわとした感じで･･･そんな女の子を驚かしてしまい、少し気が引けたのだ。

「もう既に気づいているんだろうなぁ」

そう思った俺は、席を立ち教室へと向かった。