酔 恋 -ｽｲﾚﾝ-

教室に入ると、先生が黒板に大きく自分の名前を書いて自己紹介をした。

「今年1年間このクラスの担任になった、結城 想です。よろしく。まだお互いなんもわかんねぇからさ？なんか質問受け付けるよ？俺は、また今度みんなに自己紹介の紙でも書いてもらうから」

そう言った途端、朱莉ちゃんの幼なじみだという京弥くんが声を上げた。

「はーいはいはい！せんせー！」

「おぉ、えーっとおまえは･･･」

まだ名前を覚えられていない先生は、机の順に書かれている名簿を確認する。

「あぁ、橘」

「橘っす、よろしく先生！ところでさ、せんせって彼女いんの？」

「1番目の質問がそれか？」

困ったように眉を下げて笑う先生。

それが、さっきのまさに教師って感じの先生から雰囲気が変わってて、朝の先生の雰囲気に逆戻りしたように見えた。

「いまはいないよ、彼女は」

「んじゃあ奥さんは？」

「いねーんだなぁそれが」

「なら、募集中？」

「募集中でもねぇけど。募集中なのは橘じゃないのか？」

先生のその言葉で、笑いに包まれる教室。

そのあともいくつかの質問が飛び交って、盛り上がりの熱がおさまった頃、先生が明日の連絡をするだけして、今日は解散となった。