「やだまって、イケメンじゃない」

あ、イケメンに敏感な朱莉ちゃんが反応した。

わたしはそういうのに疎いけど、朱莉ちゃんが言うならイケメンなんだろう。

それくらい、朱莉ちゃんはイケメンに敏感。

「朱莉ちゃん彼氏いるじゃない」

「それとこれとは別なのぉ。イケメン教師ってだけでテンション上がるもん〜」

さっきまで項垂れていたのに、もうルンルンになってる。

「朱莉ちゃんらしいね」

ふふふ、とわたしが笑うと、そう?と気にかけていない様子の朱莉ちゃん。

周りの女の子もヒソヒソと話しているから、相当なイケメンってことなんだろうな。

みんな、釘付けだ。

そのあとほかの先生の紹介をして、新しいクラスの担任が発表された。

2年生になると始業式の朝に玄関に新しいクラスが発表されているから、担任が誰かというそれだけが楽しみな始業式。

1年生のとき同じクラスだった雅哉くんとは離れてしまったけれど、朱莉ちゃんとは2年連続で同じクラス。

「えぇー2年5組の担任は、結城先生」

そう発表されたわたしたちのクラスの女の子からは、嬉しそうな声がたくさんあがった。

朱莉ちゃんも、そのひとり。

「やった!結城先生が担任とか幸せっ!」

「ふふっ、よかったね朱莉ちゃん」

「和花もでしょ?」

「わたしはそういうの疎いもん」

「もったいないなぁ、和花かわいいのに」

「そんなことないよ」

イケメンだ、って騒いでる朱莉ちゃんのほうがよっぽど女の子らしくてかわいい。