いつの間にか時間は過ぎて、放課後。

今日は塾もないし、図書館かファミレスで勉強しようかと考えつつ、必要な教科書類だけ鞄に詰める。


「高野さん、バイバイ」

「バイバイ」

クラスメイトに声をかけられたら完璧な笑顔を浮かべ、返事をする。

するとその子は嬉しそうに笑って去っていく。

私の言葉には気持ちがなかっただけに複雑な気持ちになった。


早く、学校を出ないと。


何故かそう思った私は、鞄を持ち席を立つ。


その時、

「高野 結愛」


席を立った私の耳に透き通った声がすうっと入ってきた。


まさか彼に呼ばれるとは思ってなかった。

彼に名前を呼ばれたのは、確か初めて。

自分でもよくわからないけど、彼の声に触れられると自分の名前が綺麗だと錯覚してしまいそうになった。