座れと示されたから座っただけなんだけど。

「…チッ」

隼人は私と逢坂 湊を睨みつけた。

私にはもう何が何だか。

さっきまであんなにご機嫌だったのに。


チラリと隣を横目で見ると、逢坂 湊は隼人に向かって不敵に笑って見せた。


「ユア、」

「何?」

「俺のことは湊って呼べ」

「…はあ」

命令口調で言った湊は私が曖昧に返事をすると満足げに笑う。

そして私の頭をポンッと撫でた。

脳天に湊の体温を感じる。


「誕生日おめでとう」

「ありがとう」


自分の誕生日を祝ってもらうなんて何年ぶりなんだろう。

誕生日ものをずっと忘れていたから、その分押し寄せる幸せを噛み締める。

頭の上に感じていた熱はすうっと消えた。

反対に心が温かくなっていく。