「舞白。卒業だな。」

卒業式の後、氷雨と共に図書室へ来ていた。氷雨が「俺らと言ったら図書室だろ」と言ったからだった。

でも、いつもと違う。それは‥‥

「ねぇ、僕らを空気にしないでくれないかな?」

ニコニコ笑顔の湊くん。

「お前ら彼氏彼女でも、ほっとくのはひどいと思うなー?」

ムーっと口を尖らせている陽向くん。

「俺は帰りたいんだけど‥‥」

卒業式が終わりそそくさと帰りたがる羽黒。

「わるいわるい‥‥(汗)でもさ、この1年楽しかったよな。」

「そーだね、特に舞白ちゃんの存在が夏宮にとっては大きいよね。」

「ばっ、それは言うなよっ‥‥!!」

「俺も!楽しかった、海原さんありがとなっ(ニッ」

《私も楽しかった。ありがとう》

そう言って笑う。

「俺は前からいるし‥‥いつでも会えるからな‥‥帰っていい?」

「お前は帰りたがるな。」

厳しい氷雨のツッコミにも動じない羽黒はすごいですよね‥‥。

「あ、そうだ!みんなで写真撮らない?記念に。」

湊くんがそう言うと、みんなが賛成する。



「行くよ!せーのっ、



「「はい!チーズ!」」


その時には私のあの大粒の涙のあとも消え、ちゃんと笑えている自分がカメラの中にいた。



「またな!」

「またね!」

陽向くんと、湊くんが手を振るので、振り返す。

「舞白ー!また大学でなーっ!」

私と氷雨は合格してまた同じ大学。

「また大学でね、氷雨」

私は心の中でそう言った。

そしたら、


「え、舞白‥‥今、なんて‥‥」

‥‥?も、もしかして、声がでた‥‥?

「あ。やぁ、気のせいだよな!またな!」

そう言って別れた。


《声が出なくてもいいですか?》


出なくてもいいじゃないですか。

好きだっていう気持ちは‥‥



変わらないのですから。


そう教えてくれた彼に出会えて本当によかった。



あなたにいつか声が届くといいな。



「好きですよ。氷雨」


私は空を眺めながら呟いた。

「舞白。なにしてんの?帰るよ‥‥俺」

そう言って少しだけど微笑む羽黒。私は当然「待って!」なんて言えないから、頭の後ろで腕組みする羽黒の背中を走って追いかけた。






春風の吹き抜ける晴天の日、私達3年生はこの思い出深い学校を卒業した。


今度は桜の下で笑った笑顔を‥‥





END