……煌君、西門って言ってたよね?
メールと、大きい砦に西門と書かれているか確認して、少し離れた木にもたれかかって煌君を待つ。
『……おい』
木にもれかかりながら携帯を弄っていると、後ろから、聞き覚えのある声で呼ばれる。
『遅れた』
振り返った私にそう言って謝った煌君に、慌てて大丈夫と言って笑う。
『人、多いねー』
『ああ。迷子になるなよ?』
そう言って馬鹿にしたようにニヤリと笑った煌君に、頰がピクリと動く。
『それは、私に言ってるんじゃないよね?』
『お前以外、いないだろ』
『私より、煌君の方が迷子なるんじゃないの?』
『俺が迷子になる訳ないだろ』
反論した私の言葉にそう言って、鼻で笑った煌君を、力任せに叩いてやる。
いつもいつも、煌君の方が口喧嘩じゃ一枚目上手なんだもん。
ムカつく‼︎
『痛くねえよバカ。
行くぞ』
そう言って歩き始めた煌君の隣に慌てて並び、人混みの中に入っていく。
さすが元旦。
今の時間、すでに6時50分で空は暗い筈なのに。
人が減る気配はなく、逆に増えている感じまでする。
『煌君、人多くない⁇』
思わず隣の煌君に声をかけるも、いくら待っても返事が返ってこない。
……聞こえなかったかな?
『煌君⁇ 聞こえなかった?』
少し大きめに言った声にも返事が返って来ず、慌てて隣を見て、唖然と固まる。
『……煌君⁇』
そう呟いた私の声は、無残に消えていく。
いきなり立ち止まった私を、通り過ぎる人たちが不思議そうに眺めていく。
その中に、煌君の姿はなくて。
『……はぐれた⁉︎』
まさかの事態に、乾いた笑みしか浮かべることができなかった。



